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カウアイ・タロ・フェスティバル(2)

ミノリ・K・エバンズ

タロの葉を題材にした焼き物のブース

 入り口には「寄付金箱」が置かれていて、つまり入場料はそれぞれの方にお任せしますということになっていた。それぞれ妥当だと思われる金額を放り込んで、会場に入る。会場といっても大きな野外の広い公園で、足下は芝生も隠れるほどに雨がたっぷり溜まっている。一歩歩くごとに、足の指と指の間からにゅにゅっと泥が出てきて、まさにタロイモ水田体験といった感じである。大きな水たまりもあちらこちらにたくさんできているが、そんなことはもう気にもならなくなって、人々はジーズンやパンツのすそを折り上げて、足元やふくらはぎを泥まみれにしながらイベントを楽しんでいた。

 会場には大きなテント・ブースが設けられて、その中では「タロイモ・クッキング・コンペ」や、ポイ(タロイモをパウンディングして作る、ハワイの食べ物。ハワイ人にとっては主食になってきたもので、現在でも多くの人に好まれている)の実演、タロイモを題材にしたアートや焼き物など、なかなかに興味深いブースが並んでいた。いろいろなブースや、タロイモについて書かれたボードなどを見ながら一周してみると、改めてハワイの人々とタロイモの関係性というのが理解できたように思った。


タロイモ料理とは思えないこの姿!? クッキング・コンテストにはずらりとタロイモ料理がならんだ

 イベント開催日の数日前に、ロコのフリーペーパー「Kauai Island News」にイベント告知を兼ねた特集が載せられていた。そこには2人の日系人のコメントが載せられてあった。一人はタロイモ栽培に関わって55年が経つKOGAさんという方で、タロイモ栽培を始めた頃には、ハワイ人に伝承されてきた伝統的なタロの栽培方法がわからず、それらをハワイの人々から教わりつつやってきたとあった。コツをつかむまでには大変な時期もあったけれど、だんだん慣れてきて徐々に収穫が増していったのだとコメントされていた。タロを栽培することは、ハワイ人にとってはただの仕事ではなく、もちろんただの食材でもない。タロを育て、タロを食べ、ロイ(タロイモや米の栽培のために水を引いた場所)で働くことがハワイ人のライフスタイルであり、タロはハワイ人にとってハワイの文化そのものである。またそれに参入していった日系人たちにとっては、ハワイという土地、ハワイに生きる人々と自分たちとをつなぐ大切なものであったのだと書かれていた。ハワイという土地にとって欠かすことのできないタロの大切さを、ここに暮らす人々、ここを訪れる人々とシェアするためのこのイベントは隔年で行われているというから、次回は2006年ということになる。


タロイモとロイについての説明ボード

 現在は、おおくの移住者がアメリカ本土やヨーロッパ、もちろん日本やアジアからも入ってきていて、そんな状況の中で、どんどんと土地が売買されている。そうやって売買されている土地の中には、タロイモ栽培に欠かせない水路となる川をせき止める形になっている場所もあり、つい先日もハワイ人の方の案内で、つい8年ほど前までは豊かなタロイモ水田であった場所が、いまは枯れた雑草だらけの土地になってしまっている姿を見てきたばかりだ。自分たちのライフスタイルであり、文化の象徴そのものであった場所が、そんな風に枯れていくのを目の当たりにしなければならないというのは、どんなに辛いことであるのかと思ったものである。


会場では栽培者自慢のタロが披露されていた

 私は今回、このイベントで売られていた「The Ahupua'a ~LIFE IN EARLY HAWAI'I」という一冊の本を買った。「Ahupua'a」というのはハワイ語で、山の高台から海へとつながる土地区分のこと。古代のハワイ人はこの区分の中でタロを栽培して漁をして生活をしていた。それについての解説書がこの本で、Kamehameha Schoolによって出版されているものだ。ただただこの島が大好きで、会社の休暇のたびにこの島を訪れ、その中で主人と知り合って結婚をして、私はカウアイの住人となった。移住してからまだ2年と半年という浅さの住人ではあるけれど、ようやくここに来て、人々との関わりや出会う出来事、そしてクム・フラであるプナからの教えを通して、少しずつもう少し深いところへと歩を進めようとしている自分を感じたりしている。カウアイは狭い島だけれど、知ろうとすればするほどになんだかとっても深い場所である。「海、きっれ〜い。山きっれ〜い。うわぁ〜いうわぁ〜い」などとあいかわらず脳天気に喜んでいる私ではあるけれど、もともとはポリネシアの文化と歴史に興味があってここを訪れたのがカウアイとの出会いである。そろそろ脳天気にはしゃいでいるばかりじゃなくて、ハワイの文化や歴史をもっと知ることも含めて、いまのハワイを形成しているさまざまな背景について、ちゃんとほんとのところを知っていきたいなと、タロ・フェスティバルで足を泥だらけにしながら、そんなことを思ったのである。


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