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デイリーケア・ロミ

ミノリ・K・エバンズ
白を基調としたマッサージスタジオ

 私のフラシスターのカタリーナから「次のガレージセールは いつ?」と、電話が入った。「う〜ん、まだクローゼットの整 理ができていないからわかんないよ」と私。ガレージセールと は、家の中で不要になった家具、衣類などなどを個人宅のガレージや、庭に広げて行うセールのことである。カウアイでは週 末になると、あちらこちらで「ガレージセール」や「ムービン グセール」が行われる。我が家でガレージセールを行った経験 はないのだけれど、私は時々「個人ガレージセール」を実施し て、クローゼットの整理整頓をしているのだ。個人ガレージセールは、あらかじめ、決まった友人知人を呼んで行っていて、体格の似ている人、年齢の近い人あたりに声をかけている。最近は、カタリーナが超お得意さま。というのも、私の買う衣類 が大好きだといってくれるカタリーナと、衣類を購入してもら う代わりに、マッサージを仕事としている彼女からマッサージを受けるシステムになっていて、需要と供給が互いにピッタリと一致するからだ。

デッキに出ると、緑の向こうに海も見える

  クローゼットの整理整頓ができるとカタリーナに電話を入れ、彼女が私の家に着て、あれやこれやと欲しいもの、似合うものを物色する。一通り、欲しいものが決まり、購入価格が決まったら、それに応じて「じゃ、今回はマッサージ2回分ね」と いう感じの段取りとなるのだ。「エクスチェンジ」と呼び、こういった自分の持っている何かと、相手の持っている何かを交換する機会が、日常のいたるところにある。モノや作業をやり 取りするのに、必ずしもお金の受け渡しが発生するわけではな い、ブツブツ交換みたいなこの習慣が、私はけっこう好きであ る。

 私とカタリーナの最初の「エクスチェンジ」は、「ねぇ、い らなくなった衣類なんかがあったら、ガレージセールしてくれない?」というカタリーナからの問いかけで始まった。「私、あなたの着ている服、好きなんだ」と。ちょうど、衣類の整理をしようとしていた私は、カタリーナを家に呼んで「個人ガレージセール」を実施した。衣類を物色しながら、これはいくら、あれはいくらと計算しているカタリーナに、「ねぇ、お金は いらないから、マッサージしてくんない?」というと、それは 有り難いとカタリーナ。スペシャルサービスで応じてくれるというので、さらにシアワセになった私なのであった。それまで 彼女のマッサージを受けたことはなかったのだけれど、それを機に、いまでは「エクスチェンジ」システム以外でも、デイリーケア・ロミを受けに通うようになった。普段はどちらかというと、ハイパーなエネルギーの彼女である。なのに、マッサージになると、そのエネルギーは一変してとても穏やかになる。 ロミロミ・マッサージにもいろいろなタイプがあるけれど、ひじから先を使うより、指先を使っていく彼女のスタイルは、私の好きなロミでもある。「痒いところに手が届く」とでもいうのか、ツボにくいっくいっと入ってくるのがいい感じなのだ。

外観は可愛らしいコテージ風のスタジオ

 カパアの町から車で15分〜20分ほどのところに、彼女の自宅 兼マッサージ・スタジオはある。静かで落ち着いていて、たくさんの緑に囲まれたスタジオは、マッサージを受けるのにとてもいい雰囲気。最近では、ほとんど一ヶ月、二ヶ月に一度の割 合で彼女からマッサージを受けているような具合だ。ドイツ人の彼女がカウアイに移住してきたのは、数年前のこと。旅行で 訪れたビッグアイランドで、偶然にロミのマスターで、クム・フラのケアリィ・チンと出会い、彼からロミを受け、彼の案内でいろいろな場所を見てまわるという、思い出深い時間を過ごした。その後、ドイツに帰ってからもハワイのことが頭から離れず、観光ビザを取得してハワイを訪れた。ホノルルに到着した時点では、どこに行くとも決めていなかった彼女だけれど、直感的に「カウアイに行こう」と決めて、この島を訪れ、ここの住人となった。興味深いのは、ドイツにいる時に、偶然にもすでにロミを習っていて、自分では意識していなかったものの 、ロミをはじめ、ハワイアン文化に触れていくことになるのを、自分の精神、あるいは心身は予感していたんだろうと理解しているようだ。「直感的にこの島に来たんだけれど、自分がここに来ることはすでに決まっていたんだなって思うの」とカタ リーナ。そういうことを言う人が私の周りには多い。そういうセリフに触れると、やはり、土地と人とは「縁あって」結ばれているのだろうなぁと、私は思うのだ。

マッサージ中のカタリーナ(ちなみに受けているのは私で はありません)

 そんな彼女は、マッサージセラピストを祖母に持ち、自身も フィジカルセラピストの資格を持っている。身体を使って、人の身体を癒す作業はだから、彼女のDNAの中にあるものなのかもしれない。何を隠そう、私の将来の夢のひとつは、マッサージの専門家になることである。といっても、マッサージをする方ではなくて、受ける方の専門家。そんなものがあるのかどう かは分からないけれど、ともかく、私はそうなりたいと思っている。だから、機会があると、ジャンルを問わずにひとまず受 ける。だから、マッサージを受ける側の感覚は、十二分に体験しているつもりなのだ。けれど、マッサージをする側の気持ちや感覚はあまりよくわかっていない。周囲には、それこそ、石 を投げればすぐに当たるくらいにマッサージ師がいる環境で暮 らしている。彼女たち、彼らは、口を揃えて「マッサージをすることは気持ちがいい」と言う。マッサージをすることで自身の呼吸も深くなって、リラックスしていけるそうだ。

 「ロミは祈りだと、ケアリィが教えてくれた。マッサージ師でいることは素晴らしいことよ。何よりも、受ける側が、私を信用して身体をまかせてくれることが嬉しい」とカタリーナ。 私も彼女に負けないくらいにはっきりと「マッサージを受けることは素晴らしい」と言える(って、当たり前かな)。そして、安心して身体をまかせられるマッサージ師が暮らしの中にいてくれるのは、ほんとうにシアワセなことなのだ。

  「Touch Kauai」というのがカタリーナのマッサージカンパニー。 興味のある人は、www.TouchKauai.comを訪れてみてください 。


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