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モロカイ島より

ミノリ・K・エバンズ
昼間にパークで開催されるフラの祭典で踊る、ジョン・カイミカウアの生徒たち

  先日、フラのハラウ(教室)で、モロカイ島に行ってきた。主要目的は「Ka Hula Pico」と呼ばれる、フラの儀式に参加するため。モロカイ島は、オアフ島とマウイ島の間に浮かぶ、東西に細長い島。その“な〜んにもない”レベルで言えばカウアイ島もびっくりの、ただただ美しい自然が広がる場所だ。日本や欧米から来るたくさんの観光客で賑わうオアフ島とマウイ島にはさまれる形で浮かびつつ、昔からの静かでゆるやかな時間が今もって流れているような、ポツンとそこだけ違う世界が海面に浮かんでいるような、すてきな場所である。

 カウアイ島からモロカイ島へは、「Island Air」(アイランドエア)という航空会社から出ている、30人乗りほどのプロペラ機で行く。とはいっても、直行便がないので、まずはホノルルかカフルイ(マウイ)に飛んで、モロカイ島へ入る。カウアイからホノルルまで25分、ホノルルからモロカイまで25分。合計しても50分の近距離ではあるものの、乗り継ぎがうまく行かないことも多くて、今回も、行きはカフルイ空港で、帰りはホノルル空港で数時間以上を過ごす事になった。合計50名にもおよぶ団体の旅となったのだけれど、私は「準備&後片付け」班となったため、ほかのメンバーよりも多めの、5泊6日のモロカイ旅となった。

レクチャーをするジョン・カイミカウア

 個人的に言うと、モロカイは二度目。実に6〜7年ぶりとなる。カフルイから飛んだ小さなプロペラ機は滑走路があるんだかないんだか分からない状態でモロカイ空港に着陸した。そこからは直接、プロペラ機のタラップを降りて、バスの停留所のようなところに歩いて入ると、そこが空港である。一画にステンレス製の細長いテーブルのようなものがあって、私たちが足を踏み入れるとほぼ同時に、そこに預けた荷物が並べられていく。初めてモロカイに来た時は、「マジですか?」と少し驚いた。その頃の私はまだ日本に住んでもいたし、そのあまりにも徹底した手作業ぶりに、心地よいカルチャーショックを受けたものだ。今回は驚きはしなかったかわりに、あいかわらずの徹底した手作業ぶりに「ああ、全然変わっていないんだ」と、なんだかホっとした。ハワイ各島はいま、すごい勢いで変わってきている。オアフ島やマウイ島はつねに変化し続けているし、ハワイ島も行く度にいろいろなところが違っている。そしてカウアイ島も。ひと言でその変化に良し悪しを言うのは難しいけれど、自然が少しずつ姿を消していこうとしているのは事実だ。だから、5年以上の月日が経って再会したものに、全然変わっていない部分があるのを知ると、どこかで気持ちがホっとする。現代社会の中で、変化しないでいるってムズカシイことだろうから。

 レンタカーを借りて、それぞれのHALE(ハレ/お家、建物、コンドやホテルなども指す)に入る。今回は大人数なので、10人ずつほどに分かれて5〜6棟を借りて滞在するのだ。私たちが滞在するHALEが、旅の間の、メンバーの集合場所になり、食事場所になり、レッスン場所になるようだ。そして翌日、ハラウのほとんどのメンバーが到着。いきなり朝、昼、夜とレッスンが始まり、その合間にイベントや、レクチャーに出かけたりと忙しい毎日である。まさに「フラ合宿」状態の中、4日目の早朝3時に「Ka Hula Pico」の儀式に参加した。儀式用にカヒコ(古典フラ)の衣装をつけ、両手首足、首、頭にカウアイから作ってきたラウアエの葉をつける。車に乗り込んだ時点で、すでに儀式は始まっている。誰も口を聞いてはいけないし、必要最小限の会話は小声でそっとクム・フラ(フラの師匠、先生)から指示が出る。会場となる聖域のゲートが開くのは、30分。この時ばかりはハワイアン・タイムはなし。ゲートが閉じられたあとで到着しても儀式には出られない。2時30分頃に到着。開門を待って、ダート道を土ほこりを巻き上げながら会場に到着する。儀式のステージとなるのは、断崖絶壁を足下に見る丘。無言のまま、ハラウ別に座る。モロカイの偉大なクム・フラで、精神的なリーダーと言われているジョン・カイミカウアの生徒が祈りを捧げ、カヒコを踊る。その直後に私たちが呼ばれ、私たちのホームグランドであるアナホラを讃えたカヒコを踊る。観客側ではなくて、断崖側(東)に向けて、みんなでエネルギーをひとつにして踊る。暗闇と静寂の中での儀式は、次第に明けていく空とともに進行して幕を閉じたのである。

年に一度の島の祭りに集うロコ&観光客

 バタバタと忙しいながらも楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、ほとんどのメンバーがモロカイを後にした翌日、最後まで残った数人で後片付けをして、空港に向かう。モロカイの空港でホノルル行きの飛行機を待っていたのだけれど、いっこうに来る様子もない。プナ(クム・フラ)がウクレレを弾いて歌い始め、それを合図に私たちもフラを踊る。空港で働く人や、モロカイへのお礼を込めて踊る。待ち合い室にいる他の人々は、喜んでくれたり、本を読みつつチラチラと様子をうかがったり、反応がいろいろでおもしろい。数曲が終わると、空港のセキュリティのおじさんが「じゃぁ、お返しに」と、ウクレレを片手にメレを歌い、傍らにいたグランドホステスの女性がすっと靴を脱いでフラを踊り出す。ほんとうにゆるゆるとした空気の中で、なんだか気持ちがほのぼのとした時間であった。そして飛行機が到着。「A hui hou!(またね!)」と手を振り合いつつ別れる。カウアイに戻ると、「う〜ん、なんだか都会に帰ってきたなぁ」なんて思えるほどに、ほんとに何もない、でもハワイ文化の色濃く残るモロカイであった。

 ときどき違う島に出かけるけれど、それぞれの島が独自のエネルギーを持っていて、飛行機でほんの30分程度のところで、自分が過ごしている日常とはまったく違う時間の流れがあるのを感じる。だから、私は別の島に遊びに行くのが大好きである。他の島の良さを知ることで、さらにカウアイが好きになっていったりする私なのである。さて、これから夏から秋に向けて、フラ・ライフはさらに忙しい時期を迎えていく。ここでの暮らしの中でフラは、趣味とかお稽古以上のものとして、どっしりと私の毎日に根を張りつつある。それは私にとって、とても愉快で嬉しいことなのだ。

※この「Ka Hula Pico」が開催された数週間後に急逝された、モロカイのクム・フラ、ジョン・カイミカウアのご冥福をお祈りするとともに、彼の守ろうとしてきたハワイ文化が後世へと引き継がれていくことを、心より願います。


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