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祝福の雨

ミノリ・K・エバンズ
チャンティングを大雨の中で

  晴天のカウアイからです。暖冬の日本も急激に冷え込んできたよ、と日本からメールが届いている。私は来週から、日本へ行く予定である。暖冬とか、急に冷え込んできたと聞いても、どんな服装で行ったらいいのか、見当もつかないでいる。とはいえ、手持ちの冬服には、つけた見当に合わせて幅を持たせるような選択の余地はない。「これなら冬っぽいかな」というものを、ただひたすらスーツケースに詰め込んで持っていくのみである。日本では、スエットパンツ姿の私に向かって、「一緒に歩くのが恥ずかしい」という友人も一人や二人ではないけれど、私は気にしない。すると、友人のうちの一人が私をかばうつもりか、こんなことを言ってみたりする。「大丈夫だよ。これだけ真っ黒けっけで、髪の毛も長〜いし、スッピンだし。どこかは特定できないけれど、遠い異国から来た人にしか見えないから。異文化の国の人だもん、一緒に歩いてても恥ずかしくないよ」と。そういう言葉は、どうかなぁ〜と思う。ちょっと失礼だろう、と思う。私にというより、そんな風に思われている諸外国の人々に。ただ、英語で話しかけられたり、私の日本語を「上手ねぇ」と褒めてくれる人が急増しているのだけは事実である。私は言葉は文化だと思っている。そして、日本語を美しい言語だと信じて疑わない。だから、違う国に暮らしてはいても、ちゃんとした日本語を話せる人間でずっといたいと強く思っている。異国に長く暮らしている人の中には、やたらと英語を混ぜて日本語を話したり、日本語の発音が可笑しくなっている人がたくさんいる。それは仕方がないことで、本人の意志(である場合もあるけれど)とは違うところで、そうなっていってしまうという部分もあるに違いない。だけれど、私は、自分は決してそうはなりたくないなぁと思っている。いつまでも、ちゃんとした母国語を話せる人間でいたい。だから、「ほんとうに日本語が上手ねぇ」と心から(!)褒めていただくと、(私の日本語は、上手ねぇ...と言われるところまで下手くそになってきているのかな)と、ギクリとしてみたりするのだ。傍らにいる友人に、「上手というか、完璧だよね?」と聞くと、友人たちは「ま、その風貌がね、普通に話せている日本語を、何か外国チックなものにしてしまうんだろうねぇ」と憐れんでくれる。

秒刻みで雨が激しくなるのが感じられた

 そんな経験をまたするんだろうなぁという日本行きまで、あと少し。カウアイはまだまだ昼間はタンクトップやTシャツということが多いものの、朝夕は冷え込み、夕方6時ともなると陽が暮れる。雨の日も多くなって(虹もたくさん出ます!)きた。私のクム(フラの先生)は、雨は天からの祝福だと言って、雨が降ると「Blessing!」などと言って、掌を天に向けて翳している。フラシスターやフラブラザーたちもそれに習って、雨の中、掌を天に向けている。そんな中、ふとどき者の私は、ひそかに木陰へと歩み寄って雨を避けたりすることもある。カウアイの雨は、とても冷たい。ポツリポツリと降る雨だったり、霧雨なら、私も喜んで祝福を受けるものの、バケツをひっくり返したような雨はちょっとキツイ。心の中で「これはちょっと、祝福され過ぎだろう...」とつぶやいている私がいる。ビーチでのレッスンではさすがに、どしゃ降りになってくると、木陰で雨をしのいでみたり、早めに解散ということもあるものの、それが儀式や祭典の最中であると、「はい、ここまで」という訳にはいかない。どしゃ降りの中で、座り続ける、佇む、あるいは踊る....そういうこともたまにある。最近では、10月に行われた「エマラニフェスティバル」が記憶に新しい。前々回(!?)のこのページでもお伝えしたかもしれないけれど、かなり激しい雨の中でのイベントとなり、最終的にはその雨ゆえ、イベントは中断となった。「エマラニフェスティバル」については、以前に書いたことがあるように、毎年恒例で、コケエの山頂で行われるフラの祭典である。私のクムのお母さんが、この祭典の創立者の一人であることもあり、私が所属するハラウは、毎年この祭典に参加しているのだ。山頂に向けて車を走らせている途中から、窓外の様子が怪しくなって、真っ白な霧の中を「前が見えない」と言い続けて、到着した。山頂はすでに冷え込んでいて、すぐに厚手のジャケットを着込む。テントを設置したあたりから、ポツポツと降り出して、みんなが衣装を着け終わる頃には、ザーザーと音を立てて雨が降ってきた。祭典はこれからである。

最も激しい雨の中で踊ったのが私たちだった

 カヒコ(古典フラ)用の衣装に着替えたあとは、肩が出て、足元も裸足で、尋常な寒さではなかった。それでも雨は激しさを増すばかりである。みんなで肩を寄せ合って、寒さをしのぐ。カチカチと子供たちの口元が、寒さで鳴っている。そして、私たちの出番が来たと知らせが入る。そうなると、覚悟は出来て、あとは出ていって踊るのみである。最初は、私を含めて4人のフラシスターとフラブラザーで、エマラニ女王に踊りを捧げる。木陰を出た瞬間から、あっという間に全身がずぶ濡れになる。それでも不思議なことに、木陰で出番を待っていた時のあの寒さはどこへやら、踊っている間は寒さを感じない。それよりも降って肌に当たる雨がなんとなく暖かく感じられたくらいだから、なんとも不思議である。雨が一番ひどかったのは、この4人で踊っている時だったように思う。ひとステップごとに雨が激しさを増していくように思えた。4人の中には来月に臨月を迎えるというフラシスターがいた。私たちは彼女の体調を心配したけれど、雨は祝福という、ハワイアンの考え方に倣えば、彼女たち親子はとても厚い祝福を神様からもらっていたのかもしれない。けっきょく私たちの出番のあと、イベントは中断になった。ほんとうに長くて、寒い一日であった。イベントが終わったあとは、暖かい服に着替えてランチ。それからまた雨の中で濡れながら、テントなどの撤収作業をする。帰路は、ヒーターをがんがんにかけて車を走らせた。「雨は祝福」と言われる中には、「雨は大地を浄化してくれる」という考えも含められている。コケエの山頂は、普段から天候の安定しない場所ではあるが、「エマラニフェスティバル」で、これほど激しい雨に襲われることもまた珍しい。ふと、この美しい山頂に、大きなリゾートホテルを建設する計画が進められていることが頭に浮かぶ。「もしかしたら、大地からの抗議の雨なのかなぁ」なんてことを話しながら、帰路についた。そして、翌日にハワイ島沖での地震で、オアフ行きを予定していた私たちは旅程を変更した。その頃、テキサスにいた私のクムはトルネードでカウアイに戻ってくるのが遅れた。なんだか、地球は多いに揺れているようである。それらは何を現しているのか...地球の環境について考えることは自分たちの責任だなぁと、ここの暮らしではそれを身体と気持ちで感じる機会が多いのである。

お知らせ:次号(第100号)では、「カウアイ日記」はお休みいたします。新年第1号(1月18日発行)の「カウアイ日記」をお楽しみに!


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