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星空に届けたい想い。 ミノリ・エヴァンス
夕暮れ時、ピンクとブルーに染まるカウアイ東海岸の空
夕暮れ時、ピンクとブルーに染まるカウアイ東海岸の空
  ご無沙汰しています、みなさんお元気ですか?
カウアイ島は冬を迎え、朝夕は冷え込み、良い波が立つ日が多く、サーファーたちはせっせと海に通う季節となりました。

 この時期の「カウアイ日記」は、冬至の儀式について書くことが多いのですが、気がつくと今年もまた冬至の儀式がやってくる時期になり、毎年のことながら一年の経つ早さに、驚くばかりです。

 今年の私のお誕生日の朝は、昔勤めていた会社の後輩からの電話で目が覚めました。訃報の電話でした。同時期に一緒にチーム・メイトとして時間を過ごして来た後輩が事故で亡くなった … 「はぁ?」 … 驚きも出来ない私の口からは、なんとも間抜けな返答の言葉しか出てきませんでした。「あ、そう。分かった」と、感情のともなわない言葉で電話を切りました。だんだん目とカラダが覚めていくに従って、(どういうこと? どういうこと?)という思いで、家の中をただウロウロと行ったり来たりして時間が経ちました。亡くなった彼とは、姉と弟のようにつながり、会社を辞めてからも日本に行く度に顔を合わせていました。彼がデザイン関係の会社を経営していたこともあり、フラのハラウや、私個人がデザイン関係の作業が必要となると「なんでもやりますよー」と、いつも笑顔で引き受けてくれていました。いつも笑顔で、「はりきっていきましょー!」が口グセの人でした。”死”というものからは最も遠そうな人物でした。

今年はラウアエの葉をティーリーフとともに編み込みましょうと、クムから。毎年、葉の種類も少し異なるのが興味深い
今年はラウアエの葉をティーリーフとともに編み込みましょうと、クムから。毎年、葉の種類も少し異なるのが興味深い

 彼のデザイン・オフィスが偶然にも、私が日本に行くと定宿にしているホテルの隣町にあったこともあって、ここ数年以上は日本に行く度に顔を合わせていました。フラの旅に出ると、スケジュールがぎっしり詰まっていることや、連日のレッスンと通訳でお疲れ気味の私に、「たまにはゆっくり話しましょうよ」「朝まで話しましょうよ」と、仔犬のようにジャレて来るのは、昔と変わらないままでした。「今度、オフィスを引っ越すんですよー。ちょっと大きな一軒家」… 私の泊まっているホテルに車で来て、無理矢理にその一軒家に連れていかれたこともありました(笑)。まだ契約が決まっていなかったけれど、「ここをね、オフィスにしたいんですよね〜」と物件を見せてくれました。その後、そのオフィスには去年の暮れに無事に引っ越しが済み、この前の10月にはその新オフィスをお祝いに訪ねるつもりでした。… それからもうひとつ。今回会う時はちょっと会社のことなんかで相談したいこともあるから、ゆっくり時間を取ってくださいねと言われ、「は〜い」と気のない返事で約束もしていました。その約束を翌月に控えた9月に彼は亡くなりました。レーシング・バイシクルのトレーニングに出かけて、車に撥ねられ、意識不明のまま亡くなりました。

 2ヶ月が経った今でも、もう彼がいないんだなーと言うことがピンと来ません。私の暮らしはまったく普通に過ぎていっているけれど、彼と話しをすることはもうありません。相談したかったことは何だったのかな、あと一度だけでいいから話がしたかったよ。そういう想いだけが日々募っていきます。

 その約一ヶ月後に、親しくしていたクム・フラのアンクル・ドリックが亡くなりました。フラ関係の人は彼の訃報をご存知の方も多いと思います。アンクル・ドリックは元気いっぱいに過ごしていた…というわけではなく、持病と戦いながらの日々を過ごしていました。けれど、人や動物が亡くなる時というのは、それでもやはり突然です。病気だからと覚悟はしていても、ほんとうに「死」が現実になった時にはそんな覚悟などは何の役にも立たないのだなということを改めて実感しました。アンクル・ドリックが亡くなる一週間前に、コケエの山中で、彼のウニキのセレモニーのために泊まり、時間を共に出来たことが今となってはほんとうに大切なキラキラした時間になりました。日本語で「またねー」と言い合ったのが最後になりました。

儀式は夜中に始まる。月と星だけが真っ暗なビーチの中で光っているのです
儀式は夜中に始まる。月と星だけが真っ暗なビーチの中で光っているのです

 後輩とも、アンクル・ドリックとも、「またねー」という時間はもう訪れないんですね。それは仕方ないことだけれど、とてもさみしいことです。「また、次ね」と約束して、その「次」の機会が来ないことがきっと人生にはたくさんあると思うのです。だからこそ、「いま、この瞬間」というものが大切なのだろうなと改めて思います。どんな言葉が、どんな態度が、その人との最後になるのかが分からないからこそ、自分の目の前にいる人との時間に思いを込めて過ごす … そういうことが身につくようにしたいなと思います。愛犬のパコも天国に逝って、今年はお別れの多い一年になりました。お別れを経るほどに、さみしい気持ち、魂になった命への愛おしい気持ちは心の中に積もっていきます。でもそれと同時に、何気なく過ぎて行く日常への愛しさも増していきます。

 フラにとって、ハワイアン先住民にとっての年末年始にあたる冬至の日は、毎年毎年、私にとっては心が厳粛になる時間です。スバルが頭上に来る夜中の12時にフラの儀式は始まります。フラを踊り、チャンティングをする私たちの頭上には満天の星空が広がっています。キラキラと静かに輝く星々の存在を感じながら過ごす時間は、とても心温かいものです。そこで、あそこで、近くで遠くで、自分たちを見守ってくれている魂の存在を感じられるからです。儀式の時には、摘んで来た植物でレイを編んで身につけます。これは、自分自身を自然の中に溶け込ますという行為です。魂になった命と、また祖先たちと交流し、星空や月、海や風に自身を同化させるためにレイをつけます。毎年、レイに込める想いというのは、同じものであるようで、でも確実に違うものです。まったくもって同じ想いで編まれたレイはありません。ひとつひとつのレイに、ひとつひとつ別の想いを編み込んでいくのです。今年のレイには、いつもよりもさらに大きな「ありがとう」の気持ちが編み込まれたことだと思います。自分を支えてくれている人、支えてきてくれた人、これからもそれらの人に支えられていくであろう日々。満天の星空に届けたい想いは、自分の手の中に、心の中にある宝物のような存在たちに向けた「ありがとう」の気持ちです。きれいごとではなく、ほんとうにそう思うのです。

緑、赤、黄のティーリーフとラウアエで編んだ今年のレイ。たくさんの「ありがとう」を込めて編みました
緑、赤、黄のティーリーフとラウアエで編んだ今年のレイ。たくさんの「ありがとう」を込めて編みました

 さみしい、悲しい想いから。または嬉しい出来事からも、私がもっとも学んでいるなと思うのは、「ありがとう」… 感謝の気持ちのように思います。気持ちがささくれだって、そういう風に思えない時もありますが … 笑。けれど、感謝の気持ちをいつも心の中心に持って暮らして行ける自分でいられたら、とてもシアワセだなと思います。

 自然のすぐそばで暮らしていることは、こういう気持ちで暮らしていくのを大きく助けてくれているように思います。これもカウアイ暮らしで受けている恩恵のひとつですね。大きな自然を見ていると、良い感じで気持ちをユルめてやっていける気がします。不満や不機嫌を振りまく人に振り回されず、というように … いろんなことを良い感じでスルーしていける気がします(笑)。自分の力でコントロールできることなんてないんだと自然が教えてくれるからではないでしょうか。

 「はりきっていきましょー!」

 いつも元気いっぱいに笑っていた後輩のこの口グセを引き継いで、新しい年を迎えたいと思います。みなさんも、どうぞ心温かい年末年始をお迎えください。


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