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ストームがやってきた。

ミノリ・K・エバンズ

曇りの日も美しい
 ただいまカウアイは冬。雨期まっ盛りである。もともと私たちの住む東海岸は、西海岸や南海岸にくらべて曇りがち、年間降雨量も多いのだけれど、Ho'oilo(ホオイロ=ハワイ語で冬)にあたる11月〜4月は雨の日が多くなる。「ハワイ」というと、常夏で、いつも青い空と海が見られるかと想像しがちだけれども、少なくともカウアイの東海岸(とくに山側)ではそういうことはない。冬には朝夕の冷え込みも増し、スウエットや薄手のフリースなどを着る。我が家のキッチンから臨めるワイアレアレの山頂はいつも厚い雲に覆われていて、年間降雨量は平均12,000mmにも達する。太平洋の海から運ばれてくる湿気を含んだ風(貿易風)は、ワイアレアレ山の山頂で雨へと変わり、北海岸、東海岸に雨を降らせる。もちろん、雨といっても日本の梅雨シーズンのようなものではないけれども、やはり夏とくらべると、どよんした曇りや雨の降る時間も増え、時には一日中雨が降っているということもある。そして、島の気候は、山側と海側、また北・東海岸と南・西海岸では大幅に違い、雨の多く降るところは多少の湿気があり、その変わりに緑が豊富で美しい。反対に雨の少ないところは湿気や雨が少ない変わりに、気温が高く、埃がたちやすい。というわけで、観光で島を訪れる場合には、北海岸や東海岸で雨に降られたら、南や西海岸に向かえば、たいていは日光がサンサンと射すビーチを楽しめる。もちろん、同じ西側でも、ワイメア・キャニオン、コケエ・ステイト・パークなど山へ向かうと気温は下がり、曇り空だったり、雨に見舞われる可能性が高くなる。島の西側に「Kekaha beach(ケカハ・ビーチ)」というところがあるが、そこを私たちやトモダチ仲間は「kekahot beach(ケカハット・ビーチ)」などと呼んで、「ほんとうに暑いよな〜」と西側の気温の高さを話題にすることがある。私たちの暮らしているWailua(ワイルア)で暑さにうだるということはほとんどないけれど、Kekaha BeachやPolihale Beach(ポリハレ・ビーチ)など西へ出かけると、そう呼ばれる所以を体感できるのだ。


暴風に揺れる椰子の木
 「雨の日にこそ、カウアイの美しさを堪能できる」とWarren(ダンナさんです)はよく言っているけれど、たしかにそれはその通りで、雨の日には、晴れの日とはまた違った美しい風景が楽しめる。晴れの日が空の青さと木々の深い緑のコントラストなら、雨の日は少し紫を帯びたモノトーンにあたりが包まれ、風に揺れる椰子の木たちもその表情を変える。ハワイ風の墨絵というところだろうか。そして、雨が上がったあとの夕焼け空はかくべつに美しくて、夕食を作る手がとまってしまうことがよくある。自然がもっとも美しい風景を繰り広げている時間は短くて、たぶん一生に二度と同じ風景は見られなくて、毎度毎度、目の前の風景を目に焼き付けたいとじっと見つめ入ってしまうのだ。

  とはいうものの、雨の日にもいろいろと程度がある。こうして「雨に降られるカウアイは格別に美しい」と風景を楽しめる日もあれば、時には悪天候にびびらされてしまう日もある。数日前に「ストーム(暴風、時に暴風雨)が来るよ!」とWarrenに言われた時、ええ〜また〜、と思ってしまった。つい先日、といっても1ヶ月半ほど前にもストームが来て、我が家のアボカドの木の枝をほとんど持っていかれてしまった。ちょうどそれは私が日本からこちらに帰ってきた日で、ホノルルからの飛行機がやけに揺れるな〜と思ったものだ。階下のガレージにあるあれやこれやは庭に飛んでいるし、窓もドアも風に揺れてびんびんと音を立てて震えていた。パコ(我が家の犬です)はベッドの下にもぐったきり出てこず、稲光と雷が激しくなると、さらに怯えてバスタブへ飛びこんでガタガタ震えていた。ご存じの人も多いと思うが、カウアイは過去2回、大型ハリケーンに見舞われている。1982年に来た「イワ」と、1992年に来た「イニキ」がそれで、「イニキ」が来た際には最大瞬間風速が時速165マイルに達し、島の90%の家屋が被害を受けたそうだ。被害に遭った人にはそれは悪夢のような出来事であったし、それは、「イニキ」未経験者の私たち新しい住人にも、十分な恐怖感を抱かせる災害である。Warrenは「イニキ」の体験者で、彼が住んでいた当時の家も屋根がすぽんと飛んで、壁が頭上に落ちてきたという。また、島の中には未だ営業再開の見込みがつかないホテルなども残っていたり、森の中を歩けば「イニキ」にやられた木々が痛々しい姿で倒れ落ちていたりして、その災害の大きさを垣間見る機会がままある。だから、ストームが来ると、稲光や雷が怖くない私でも、いつ来るかもしれない「大型ハリケーン」を想像してしまって、「イヤだなぁ」と思ってしまうのだ。ちなみにこの間のストームで、トモダチの家ではバナナの木がぼきぼきと折れたり、他の知り合いのところでは、家の裏手の大きな古木が根本近くからすごい音を立てて折れてしまったという。余談だけれど、「イニキ」が来たのは1992年9月11日。記憶に新しい、ニューヨークでのテロ事件が起こったのも9月11日。そしてここでのエマージェンシー・コールの番号が「911」。よって、カウアイでは「911」という数字は不吉な数字だとされている。9月11日にカウアイを訪れた人は、「911」と大きく書かれたTシャツを着た人を見かける機会があるかもしれない。それは「イニキ」の悪夢を忘れずにしよう、と作られたものだ。


晴れた日にはきれいな山並みが見えるのに、ストームの日はこんな感じ
  こんな話を書くと「危険なところに住んでいるな〜」と思う人もいるかもしれない。私も怖さを感じることはあるけれど、ストームが来たり、家の窓から空いっぱいに広がる大きな稲光を見たり、土砂がまじって真っ茶色になった海が波しぶきをあげるのを見るたびに、「自然の近くで暮らしているのだな」ということを強く実感する。もちろん、生命の危機にさらされるような災害に遭いたくはないけれど、時に「まいったなぁ」と思う天候に見舞われることも含めて、自然のそばで暮らすことを「贅沢な暮らし」だと思う。私のKumu(クム=フラの先生)のPuna(プナ)は、レッ スン中に雨が降ってくると「Blessing!」(天の恵み)と言って、両手を広げて、シアワセそうに雨を体に受けている。自然の恵みが何かを知り、それを享受しながら暮らすこと。同時に自然の恐ろしさを知り、畏敬の念を持って暮らすこと。その大切さを古くからこの地に暮らす人々は、よく理解しているに違いない。

 あ、でも、ストームやどしゃ降り雨のあとの海にはご注意を。「チョコレート・オーシャン」と私たちが呼んでいる雨のあとの海には、鮫がでやすいらしいです。

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