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フラ・キャンプ

ミノリ・K・エバンズ
アナホラ・ビーチ

  気持ちよく晴れ上がった8月中旬の週末、私の所属するハラウで、毎年恒例のフラ・キャンプがあった。フラ・キャンプはいつもこの時期、数日から一週間以上と毎年、期間や内容を変えて実施されている。何をするということもないけれど、ビーチにテントを張って、のんびりとしながらフラ三昧の時間を過ごす。今年のキャンプは一週間。各自、テントを張ってビーチで過ごすメンバーもいれば、私のように毎日、家とビーチを往復してキャンプに参加する者もいる。一週間と言っても、ずっとその場所にいるわけではなくて、仕事のある人はそこから仕事に向かったり、時間のある者は、以前から各自で製作中の、ハウ・スカート(ハウの樹木から採れる繊維で作るフラ用のスカート)に取りかかったりと、ゆるゆると自由に時間を使う。

いろいろなサイズ、形のイリイリ

 週末の3日間はフラのワークショップ、そしてインプリメンツ(フラで使用する道具)の製作だ。今年の課題は「イプ・ヘケ・オレ」と「イリイリ」を使ってのカヒコ(古典フラ)。ちなみに「イプ・ヘケ・オレ」は、乾かした瓢箪の頭の部分を切り落として、中を洗浄し、首のところに「カウラ」と呼ばれる編み紐をつけて出来上がる。多くのハラウでは、こういったインプリメンツは専門店で購入してくるのが、現代ではほとんどだと思われる。だけれど私たちのハラウでは、自分たちで作るところから始める。だから、「イプ(・ヘケ・オレ)」を使った曲をやるわよ、とクム(フラの先生)が言えば、それは「イプ(・ヘケ・オレ)」を作るところから始めるわよということになるのだ。そして「イリイリ」は、ポハク(石)のこと。平たい川石と、少しラウンドした同じ種類の石が1セットになっていて、これが片手用。両手で2セット。踊りには、合計4つのポハクを用いる。親指と人差し指でひとつのポハクを持ち、残りの3本の指でもうひとつのポハクを持ち、掌に包み込む要領で、2つのポハクを「カチカチ」とカスタネットのように鳴らすのだ。同じ種類の、形の整ったポハクを手に入れるのはなかなか難しい。というわけで、こちらはクムが用意してきたものをひとまず使用して、どこか、川沿いやらに行く機会がある時に拾ってきましょうということになった。

 ハラウのメンバーが育てた瓢箪、そしてクムが持ってきたポハクがズラリとピクニックテーブルに並べられて、その中から、自分の手に合うサイズ、形のものを、あれやこれやと言いながら選んでいく。「そんなに神経質に選ぶ必要はないのよ」とクム。私たちがイプやポハクを選ぶのではあるけれど、インプリメンツもまた、使う人間を選んで、その人のもとにやってくるのだから、と。私はみんながおおかた選び終わったあとで、残り数個の瓢箪の中から、これにしようと思うものをピックアップした。イリイリは、やはり掌サイズに合うもの、それを持って踊るので、重さも選ぶ基準になってくる。とりあえず、このあたりかな...と思えるポハクを選んだのであるが、練習開始からすぐに指の皮が剥けてしまって、私の指からにじんだ血が、少しポハクについてしまった。それで私は、このポハクが私を選んだのかなという気になって、そのポハクをもらうことにしたのだ。

海からの風になびくパウ・スカート

 イプ・ヘケ・オレは頭の部分を切り落として、海へと行き、浜の砂と海水を中に入れてシャカシャカと振る。そうすると、中の繊維やらがどどっと出てきて、その作業をくり返すうちにイプは軽くなり、中身はきれいになっていく。木の下でしばらく乾かす。おおかた乾いたところで、お尻の部分をパンパンと叩くと軽やかな音がした。フラ・キャンプの最中には、普段からレッスンの時、儀式の時に身につけているパウ・スカートを洗う作業もある。「パウ・スカートが踊りを憶えるのよ」とクムは言う。だから、パウは踊り手にとって身体の一部だという考えのもと、容易に洗濯機で洗ったりすることは禁じられてもいる。年に数回、海の中に入っていって海水にさらす。そして絞ったりはせずに、そのまま干して、海からの風で乾かすのだ。海水は布につく雑菌やら匂いやらを消して、乾かしたあとのパウはパリっと糊の効いた状態になる。そんな作業を順番に、レッスンをする傍らで行っていく。海辺の木にロープを張って、パウを広げて風にさらしていると、驚くほど短時間で乾く。

中央が完成した「イプ」

 ワークショップ2日目は、近くで同じようにサマーキャンプを行っていた、ハワイアンスクールの子供たちとひととき合流。一緒に、カヒコを習う。時折、こんな風に、ハワイアンスクールの子供たちと時間を過ごす機会に恵まれるのだけれど、私は先生たちと子供たちの交流を垣間見る、こういう時間が大好きである。ハワイ語やチャンティング(詠唱)、フラ、ハワイの慣習やら、ああ、今こうして、ハワイアンたちにとっての大切な文化が次の世代へと引き継がれていっているんだなぁ。そしてそんな時間を目の前で見られること、そんな時間の中に身を置けることのシアワセ。そして、そういうものを目の前にして、私はいつも同じことを思ってもみる。私たちの世代の日本人が次の世代へ残していけるもの、次の世代へと受け継いでいけるものって何だろう。...今のところ、自分の中に確固とした答えはまだないのだけれど。

 今年もゆるゆると楽しい時間が流れる中、フラ・キャンプが終了した。9月に入ると、フラのイベント・シーズンが始まる。カウアイはまだまだタンクトップの季節。それでも、朝夕の空気の中に、かすかだけれど、ひんやりとした空気が混じるようになってきた。フラ・キャンプが終わると、カウアイにもそろそろ夏の終わりが近づいてくるように思う。どこにいても、夏が終わっていくのは、何だか少し寂しい気分になってしまうのが不思議である。


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