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アリサとの日々 その2

ミノリ・エヴァンス
 この日、アリサは人生で初めてのサーフィンにハナレイ湾にウォーレンと出かけた。「かあちゃん、行ってきま〜す!」と勢いよく出かけて行く。私も2時間ほどあとに2人がサーフィンをしているポイントをのぞきに、アリサのママの陽子ちゃんと行ってみた。ちなみにアリサが我が家にホームステイしている間、「一人でホームステイしたいの!」と言い張る娘の希望を叶えるために、陽子ちゃんはクムの家で、これまた自身もホームステイ体験中。この日は、「アリサがサーフィン行くからあとでのぞいて見よう」と、本当のママと、なんちゃって母ちゃんの2人で、娘の初サーフィンをのぞきに行った次第である。ポイントについてみると、我が家の階下の間借り人カップル、ポールとブルーキーの2人もそこで波にもまれていた。「あれ、一緒に来てたの?」と言うと、「そうなの。私たちはダメだけどね、アリサはがんがん乗ってるよ〜」と、ブルーキーが自慢そうに教えてくれた。最近ハワイに引っ越しをしてきたばかりの2人にとっても、この日は人生初のサーフィンだったらしい。それにしても、自分たちは全然ダメなのに、なんでそんなに自慢気な口調なのかとオモシロかったが、ブルーキーは学校の先生。ちょうどアリサと同じ小学校6年生を担当している。「この年頃の子ってほんとうに見ていて、気持ちがいい。学校で教えるのも仕事だから、帰宅するとクタクタに疲れているものなんだけれど、ハワイに来て、この学年を受け持ってからは毎日笑顔よ!子どもたちがこっちまで元気にしてくれる感じ。アリサを見ててもそう思う。子どもはこうやって自然の中でがんがん遊んでいるのが一番ね」と言っていた。

 アリサはというと、なるほどブルーキーの言う通り、波が来てウォーレンがサーフボードを押す度に、きれいに波に乗って、ボードの上に立ち上がっている。「アリサはセンスいいな〜!」と、なんちゃって父ちゃんのウォーレンもこれまた自慢気である。若干、親バカ視線になっている、私、ウォーレン、ブルーキー、大人3人の視線など気にしないで、アリサは「もっともっと」と海から上がる様子もない。その横で、波に打ち砕けるポールの姿も視界に入る。まだ若いのに、11歳の子どもの隣での人生初挑戦は、「ちょっと残念なオジサン」状態になってしまっているのが気の毒な感じであった。

 サーフィンのあとは、フラのプログラムへ直行。とは言ってもこちらもカウアイの小学校のファンドレージング(寄付金集め)で、子どもと一緒にフラを踊るというもの。現地に到着すると、すでに他のフラ・メンバーとクムが到着して、着替えも済ませている。慌てて着替えて、アリサを呼びにウォーレンのトラックに行くと、「もう気絶状態で寝こけているよ」とウォーレン。聞けば2時間以上、ひたすら波乗りをしていたらしい。窓から中をのぞくと、そこにはたしかに「気絶?」としか言いようのない状態で、眠り込んでいるアリサの姿があった。これでは踊るのは無理だろうと判断して、大人だけでステージに上がる。ステージ終了後、アリサがここでの滞在でお友達になったエラに、「アリサは?」と聞かれる。トラックの中にいるから、起こしに行こうと車に向かった。あいかわらず「気絶」状態で寝ているアリサ。ドアを開けてあげると、アリサよりもっと小さなエラが「アリサ、アリサ〜」と遠慮がちに起こしてみるが、目を開ける気配もない。エラと一緒に来ていたちびっ子たちに、「これ私の友達のアリサ」と、気絶状態のアリサを指差して紹介している。そこで周りのちびっ子たちも、「Hi! アリサ」と声をかける。と、アリサの目が開いた。「★♥○×☆…」何かを言っているが、本人が完全に寝ぼけているゆえ、何を言っているのかが分からない。よく聞くと、「ごめんね、エラ。私眠くて起きられないの」と言っているようだ。しかも、日本語で。そしてまた気絶状態に戻る。そんなもん、エラたちに通じるわけがない。と思ったと同時くらいに、「アリサは眠くて起きられないんだって、また今度ね」と、周りのちびっ子たちに説明をするエラ。ちなみにエラは4歳。な、な、なんだ? 通じてる! 子どものコミュニケーション能力というのはすごいものである。

 ともかく、アリサはカウアイでの日々を、毎日パワー全開で過ごした。毎日夜になると、「一緒に寝よ〜」と言ってくるのが日課だった。「自分の部屋で、一人で寝るっていう約束でしょ」という交渉が続くのも3秒。ベッドに入った途端に深い眠りにつく毎日であった。それくらい、一日が終わる直前までを全力で楽しんでいたのであろう。お友達もいっぱい作った。ホームステイは考えてみれば一週間と少しという短い間だったものの、アリサと家族として過ごした日々は、私たちにとってはとてもとても楽しく、あっと言う間の時間でもあり、もっと長い時間を過ごしたようにも思える密な日々だった。アリサにとってのカウアイでの思い出の一部として、私たちがいれたこともシアワセなことである。彼女はきっと、これからもずっとこの時間を忘れずにいるのだと思う。ある日の車の中での会話だったろうか。英語を話せるといいね、日本に帰ったら英語の勉強、がんばる。というアリサに「うん、英語ができるようになるのはいいね。」と言って、英語が話せないっていうのは、満天の星空を竹筒で見ているようなものなんだって言う話をした。つまり竹筒で見える範囲でしか、満天の星空を楽しめてないってことなんだけれど、その意味がどこまで11歳のアリサに通じたかどうかはわからない。だって、「だったら、すっごい大きな竹筒で見たらいいんじゃない?」って、アリサは言っていたから。(笑)…まぁ、それも言えるけれど。

 ちなみにこれは、私の高校時代の英語の先生の受け売りである。「なんで日本に住んでいるのに、英語を勉強しなくちゃいけないの〜」と文句を言った私たちに(と言っていた自分をあとで思いきり後悔するハメになった私ですが)、その先生は言ったのだ。「英語ができないって言うのは、満天の星空を小さな竹筒で眺めているようなものだと先生は思うんです。もったいなくない? 大きくて広い満天の星空を、竹筒を持たずにめいっぱい楽しんでみましょうよ」と。私たちの英語の先生は、とても失礼な言い方だけれど、すごく冴えない感じの地味な女性で、およそ、なんでこの人が英語?みたいな存在だった。けれど、そう言われた瞬間、私にはその先生がとてもキラキラした存在に思えたものである。「何言ってるのかよく分かんないよ、先生」と悪態をつき続ける友人たちに混じりつつも、内心とてもその言葉に感動した私がいたものである。大人になってからもこの言葉はずっと私の中に残っていて、英語だけではなくて、いろんな物事、人との関わりを持つ中で、いつも繰り返して自分に問うてみている言葉でもあるのだ。「竹筒を持たずに満天の星空を楽しみたい」と、だから私はいつも思っている。そして、ご縁があって私たちの、なんちゃって我が娘になったアリサにも、そんな風にこれからの人生を歩んで行ってほしいなぁと、自分勝手に思ってしまったのである。

 ともかく、アリサのパワー全開なカウアイの夏は終わった。日本に帰る日、アリサのテンションはそれまでになく低かった。気持ち悪いくらいに低かった。車の中でも静か。空港でのお別れも静か。楽しかった時間とのお別れがすごく寂しかったのだろう。けれど、別れるのがそれだけ辛いくらいに楽しい時間が持てたことは、これからの彼女にとっての気持ちの財産になっていくのだろう。私もアリサから、瞬間瞬間を全開で楽しむことの大切さを、改めて教えてもらった。大人になってからそうするのはなかなかムズカシイ、というのはきっと言い訳だ。大人は大人なりの方法で、瞬間瞬間を全開で楽しめる。なんちゃって我が娘が私に教えてくれたことである。

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