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カヌーと長距離航海(2)
近藤純夫
コアの巨木

 カヌーの制作は漁に不可欠な道具というだけでなく、重要な文化であり、信仰表現のひとつでもありました。カヌーを制作するにはいくつもの決まり事を行う必要があったのです。それらは以下のとおりです。

(1) 素材である原木を探し、その夜、夢でお告げをもらい、吉凶を占う。
夢に女性が現れるとカヌーは壊れると信じられた。
(2) 吉と出たら、カヌー専門のカフナ(専門家)が占い、現地で確認をする。
(3) カヌーを制作することになった場合は、制作の儀式を行う。
(4) 完成の際はロロと呼ばれる儀式を行う。
(5) 進水式を行ない、カヌーの能力を占う。








 カヌーの原木となったコアの巨木を切るとき、人々はカヌーの女神であるレアにチャントを唱えました。下に挙げたもの以外にも多くのチャントが唱えられたと言われます。

  カヌーの女神レアよ
  カヌー制作を見護るレアよ
  わたしは森で木を切ります

  カヌーの女神レアよ
  ここに供物を供えます
  赤い魚と赤いマロ(ふんどし)です

  どうかわたしに腕と力と思慮深さをお与えください
  そして忍耐をお与えください
  わたしが木を切るにあたり
  障害となるものがないようにお導きください

  わたしの斧が狂いなく木を切り倒すべく
  斧の一振り一振りがしっかりと木に食い込むよう
  お導きください

制作の道具

カヌー制作の道具
(1) 手動ドリルはポリネシア全域において用いられました。ロープを通すために木に穴を開ける道具ですが、錐の部分は真珠貝のような堅い貝が用いられました。
(2) 砥石は工具となる斧やノミの研磨に用いられました。石は諸島内で調達する場合はハワイ島マウナケア山頂付近にかつてあった氷河跡の硬い石(玄武岩)を使用しました。
(3) 2と同じ石ですが、叩くのに適した形状(丸く適度な大きさがあるもの)を用いました。
(4) ロープの素材にはココヤシの実に詰まっている繊維を編んで用いました。
(5) 斧はもっとも重要な道具のひとつです。刃は2や3と同じ石を研いだものです。柄はハウ(アオイ科の樹木)か、オロプナ(モクセイ科の樹木)のような、固く弾力性のある木を用いました。接合箇所にはココヤシの繊維を用いましたが、まれにオロナ(イラクサ科の灌木)も用いました。台座となる柄と石の間には緩衝材兼滑り止め防止用としてタコノキ(ハラ)かバナナ(マイア)の葉を挟みました。変則型の斧としてコイ・アーヴィリ( クーパーアイケエ)と呼ばれる、刃の部分が縦位置と横位置とに変更可能なものも使用されました。刃の角度の変更は後部のロープを緩めて行います。
(6) 梁(張り材)。カヌー本体とアウトリガーを結びつける留め具。
(7) ノミ。砥石で先端を鋭くしたもので斧の刃と同じです。

カヌーの名称

構造と名称

 カヌー本体は巨木をくり抜いて作られました。ハワイにやって来た人々は主にカマニという樹木を用いましたが、ハワイにこの木はなく、船体(kino)の素材にはコアが用いられました。ちなみに、アウトリガーカヌー(Wa‘a kaukahi)と双胴カヌー(Waa Kaulua)とでは微妙に構造が異なります。

原木の伐採から完成までの期間

 斧はどれほど鋭く研いでも当時の技術では限界があります。男1人でコアの巨木を倒すのにはほぼ1週間が必要でした。複数で作業しても切り倒す人数には限りがありますから、最低でも2日はかかったようです。今日の斧で同じ規模のコアの木を切り倒すのは半日の作業で済みます。切り倒した木を彫るときは多くのカフナに、祈りと供物を献げる儀式が必要となります。

 木の芯をある程度掘った後、くり抜かれた原木はあらかじめ用意しておいた集落の作業所まで降ろします。そこで最終的な作業が行われますが、完成までには最低でも3ヶ月を費やしました。

原木を下ろす作業

側板とリム

 側板にはアハケア(‘ahakea)と呼ばれるアカネ科の樹木が用いられました。側板は留め具(Wae)と座板(noho)で補強されました。座板の幅は大型のものでも60cm程度しかありません。先端部のリムはマヌと呼ばれました(※マヌとは航海において方位を示すことばのひとつでもあります)。リムにはこの他にホオノルオノル(船体の前後に張り渡すリム)、オイオ(リムの前後を等間隔に保ち、外側からの衝撃から船体を守る役割をするリム)などがあります。これらはロープで固く結ばれ、固定されました。

 船首のカバーは木製である場合とカパで覆われる形式のものがありました。内壁の突起(pepeiao)はブームを取りつける際の支点となる他、帆やマストから伸びるロープを固定する役割を果たしました。小型のカヌーはパドル(hoe)を使いました。素材には明るい色のコアが用いられることが多かったようです。コア以外にもアハケア、ハウ、ナイオ、ウルなどの樹木が用いられました。

カヌー小屋(halau wa'a)

 ハワイのパドルは今日に見られるカヌーパドルより遥かに重く大きく、荒波にも耐える性能がありました。そのため、パドルを自在に操るには腕力と体力が求められました。
パンノキ(ウル)の葉を乾燥させたものはサンドペーパーとして用いられ、ククイやバナナ(マイア)、タコノキ(ハラ)、ティ(キー)などの植物から採った原料は染色剤として利用されました。

工程最後の儀式

 本体が完成するとロロと呼ばれる儀式が行われました。ブタの供物を献げて祈りを唱えるのですが、このとき雑音や不具合がなければ最後の工程として、アウトリガーが本体に接合されました。

ロロのチャント

  モクハリイよ、クパアイケエよ、レアよ
  ここにあなたたちへの供物として
  ブタを献げます
  カヌーは完成し
  進水式を待つばかりとなりました
  海はわたしたちの糧を育むところです
  注意深く観察し(海面下の)珊瑚に気をつけながら
  波やうねりを乗りこえて大海に漕ぎ出でます

トップページはハワイ諸島に上陸する人が見たかもしれないサンセットです(写真はカイルア・コナ)。次回はカヌーと長距離航海(3)と題し、島の発見に関するお話をする予定です。

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