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芸術家たちの集まる町ハナペペ
近藤純夫
 ハナペペにはハワイ語で「押し潰された湾」という意味があります。湾を取り囲む岩壁は、かつてその先にあった陸地が海に崩れ落ちたことを表しているのかもしれません。キャプテン・クックが最初にハワイ諸島の土を踏んだのは、西隣のワイメアですが、このときまで先住のハワイ人はハナペペ渓谷を流れる川の周辺に広がる、肥沃な土地で暮らしていました。また、ハワイ諸島最初のサトウキビ農園は、ハナペペの隣町コーロアではじまりました。農園に植えられたサトウキビの種類は異なりますが、コーロアにはハワイ語で「サトウキビの豊かな地」という意味があるように、ハナペペ周辺は昔からサトウキビが広がっていました。

ハナペペを取り囲む風景
ハナペペを取り囲む風景
アロハ・スパイス・カンパニー
アロハ・スパイス・カンパニー

 ハナペペ渓谷には当時、サトウキビの他にも、タロイモ(カロ)をはじめ、バナナ(マイア)やサツマイモ(ウアラ)など、豊かな農作物がありました。また、夏場に収穫する塩田が半島の先にあります。この塩は今日でも「この地の重要な収穫物」という象徴的な意味を込め、物々交換で人々に手渡されます。

 カウアイ島に砂糖工場が設立された19世紀には、最初に中国人が、続いて日本人やフィリピン人が契約農民としてカウアイ島にやってきました。この労働者たちの受け入れ口としてハナペペの町も発展していきました。やがてサトウキビ畑の契約労働を終えた人たちや、奴隷的な環境に嫌気がさし逃げ出してきた人たちは、この地でタロイモや米の水田のほか、小さな農地を開墾しました。やがて1900年代に入ると、サトウキビ農園やパイナップル農園での紛争はさらに増し、賃金や労働条件の向上を要求してストライキを行うことが多くなりました。農園を追われたり、飛び出した労働者たちの一部はハナペペの町に住みつき、商店を開いたり、ハナペペ湾の港湾労働者などの職につきました。商店街を少し離れたところにあるタロ・コ・チップスなど、いまも日系人が営む店がそこかしこにあります。

タロ・コ・チップスのオーナー

タロイモやサツマイモのチップス
タロイモやサツマイモのチップス

 1890年代にキリスト教宣教師団がハナペペに入植し、教会が建てられたのが、近代化(西欧化)の第一歩でした。この教会は当初ハナペペ・ファースト・ユナイテッド・チャーチと呼ばれていましたが、現在はハナペペ・ハワイアン・コングリゲーショナル・チャーチと呼ばれます。その後も教会は増え続け、20世紀を迎える頃には1ダースに近いさまざまな宗派のキリスト教会がこの小さな町に設立されました。現在は、キリスト教会4つのほかに、ハナペペ本願寺とカウアイ曹洞宗禅宗寺という2つの仏教寺院があります。

アート・ナイトの光景
アート・ナイトの光景

禅宗寺

禅宗寺


 ハワイ島のパホアやホノム、マウイ島のマカヴァオなどとともに、ハナペペの町は時代を過去へタイムスリップしたような古い町並みが特徴です。商店街は州道から少し北へ入ったところにありますが、小さな町ですから歩いてもすぐに終わります。しかし20世紀初期には砂糖産業が繁栄し、米軍もここに演習基地を置いた結果、ホテルや病院、ビリヤード場、バー、ボーリング場、劇場などが建ち並び、ローラースケート場も2つあるほどの大きな町に変貌を遂げました。それはそれは華やかな町だったのです。この盛況は第2次世界大戦が終了するまで続き、カウアイ島でもっとも活気あふれる小さな町という称号が付いたほどです。

 しかしこの栄華はやがて途切れ、ハナペペは静かな田舎町へと戻りました。けれども先に紹介したパホアやホノムなどと同じく、町には多くの芸術家が住みつきました。人口わずか2000人ほどの町ですが、カウアイ島でもっとも多くの画廊があるのです。毎週金曜の夜には『Art Night』が開催され、コンサートが開かれるなど、商店街は夜遅く(午後9時頃)まで賑わいます。また、年に一度、カウアイ・オーキッド・アート・フェスティバルが4月上旬に開催されます。このときはコンサートや地元店のセールだけでなく、子どもたちのための太鼓祭りや手芸、工作など、多くの催しが開かれます。


 古いけれど個性的なただずまいが気に入られたのか、この町は映画のロケ地として知られています。もっとも有名なのはディズニー映画の『リロ&スティッチ』でしょうか。このほかにも『イントルーダー』や『ミッシング・イヤーズ』など、多くの映画に町並みが登場します。

ハナペペ川にかかる吊り橋
ハナペペ川にかかる吊り橋
ジョルジオ・アート・ギャラリー
ジョルジオ・アート・ギャラリー

 塩田から眺めるサンセットやワイメア渓谷に匹敵する渓谷、あるいはハナペペ川の北と南を結ぶ吊り橋など、周囲の自然も含めてハナペペの町を楽しんでみてはいかがでしょうか。

ハナペペの主なアート系ショップ

 Amy Lauren’s(画廊)
 Angela Headley Fine Art(画廊)
 Arius Hopman Gallery(画廊)
 Dawn M. Traina Gallery(画廊)
 Giorgio’s Gallery(画廊)
 Hanapepe Art Works(画廊)
 Island Art Gallery(画廊)
 Kauai Fine Art(画廊)
 Puu Wai Gallery(画廊)
 Robert Bader/Art of Marbling(画廊)
 Robin McCoy/Kamaaina Cabinets(画廊)
 Shaning Cierra’s Gallery(画廊)
 Kauai Finds(ジュエリー)
 Sheldon Gate Jewelry(ジュエリー)
 Banana Patch Studio(美術工芸品)
 Island Reflections Photography(写真館)
 Aloha Spice Company(雑貨)
 JJ Ohana’s & Boutique(雑貨)
 Moonbow Magic Gift Gallery(雑貨)
 Jacqueline’s of Kauai(雑貨)
 Puahina/Warrior Designs Hawaii(雑貨)
 Talkstory Bookstore(書店)
 Keiki Kovers Kool Threads for Kids(子供服)

トップページはバナナ・パッチ・スタジオです。タイルにハワイの風物を描いたものは日本にも輸入されています。次回はカパという不織布の素材となったワウケについてお話しします。


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