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バニヤン・ツリー
近藤純夫
次々と気根を伸ばす
次々と気根を伸ばす
 バニヤン(ベンガルボダイジュ)はイチジクの仲間で、生長すると30メートルを超える高木となります。ハワイでは公園や並木として各島で見られます。この木の最大の特徴は、次々と伸びる気根の働きと言ってよいでしょう。遠目には巨木に見える木も、実は多数の気根の集合体なのです。バニヤンの仲間のうち、日本でよく知られるものには、沖縄のガジュマルやアコウ、イチジクアウレアなどがあります。

 枝から下がって伸びる気根は幹のような役割を果たすので支持根とも呼ばれます。そこからさらに新しい「木」が育つということを繰り返しながら周囲に拡散するのです。マウイ島ラハイナには1本の木が100メートル四方に伸び、公園となっているところがあります。これは、1873年にウィリアム・オーウェン・スミスによってキリスト教宣教師の到着50周年を記念して植樹されたものです。ちなみに、世界最大のバニヤン・ツリーはインドのハウラー植物園にあります。1本の木から2800本の幹化した気根が生じた結果、1.5ヘクタールもの広さに生長しました。

マウイ島ラハイナにある「1本」のバニヤン
マウイ島ラハイナにある「1本」のバニヤン

 枝は気根を伸ばすだけでなく、周辺に木がある場合は絡みつきます。これはイチジクの仲間によくあることで、からみつくとその木を締めつけ、最終的には殺してしまうために、「しめ殺しの木」と呼ばれることもあります。ただし、バニヤンは他の木から栄養分を吸い取るわけではなく(寄生するのではなく)、生長を支える土台として利用する植物(着生植物)です。

 バニヤンが作る木陰は、古くから集会場所として使われました。ヒンズーの神話では、ベンガルボダイジュは「望みを叶える木」であり、永遠の生命を表すとされました。インドではヒンズー教徒だけでなく、仏教徒にとっても神聖な木とされ、寺院の周囲に植えられてきました。

 バニヤンは材が堅く、水中でも耐久性があるため、家具や建材として使用されます。幹だけでなく、気根から採れる木材にも強度があります。樹皮の繊維は紙やロープの製造に使用されるほか、果実は生食、あるいは乾燥させたドライフルーツとするほか、樹液からはガムが作られます。また、葉や芽も救荒植物として利用されます。

バニヤンの葉と実(photo by Forest and Kim Starr)
バニヤンの葉と実(photo by Forest and Kim Starr)

 バニヤンの気根は繊維質が豊富で強靱ですが、根元にあたる枝の節部分は必ずしも強いとは言えず、気根にぶら下がると基部から抜け落ちることもあるので気をつけてください。

 バニヤンを含むイチジク属の花は、花嚢(かのう)の内側に初期のみ花が咲きます。これは外側からは見えません。花が咲くと花嚢の頂に小さな穴があき、そこからメスのコバチが入りこみます。この段階では雄シベに花粉ができませんが、雌シベの子房は受精可能です。そのからくりはちょっと複雑です。メスのコバチは雌シベの柱頭から産卵管を差し込み、子房の中の胚珠に産卵します。産卵後、腹の花粉袋から花粉を出して花柱につけるのです。「後付け」というわけです。ちなみに、日本で栽培されているイチジクはほとんどが果実肥大の目的でイチジクコバチを用いることはありません。栽培品種は受粉を必要としない単為結果性品種のためです。

ベーブ・ルースが寄贈したバニヤンの木
ベーブ・ルースが寄贈したバニヤンの木

 ハワイ島のヒロにはバニヤン・ドライブがあり、バニヤンの並木道ができています。ここの木は、ベイブ・ルースやマリリン・モンローなど、全米の著名人が植樹しました。近郊のレインボーフォールズ脇にも巨大なバニヤンがあります。

 ちなみに、原産地のインド各地の仏教寺院では、本種の代用としてシナノキ科の植物のボダイジュがよく植えられます。そのためボダイジュが「菩提樹」であるかのように言われますが、仏教で語られる聖木としての「菩提樹」はインドボダイジュのことです。

 バニヤンは医療用としても用いられてきました。伝統的な医術では、慢性的な疾患に用いられました。樹皮と葉の芽は止血に、赤い果実は皮膚や粘膜の炎症止め、痛み止めなどに、また、乳液状の樹液は、痛みや打撲傷用の外用薬および歯の鎮痛剤として用いられました。近年では糖尿病の治療薬となる可能性のあるロイコシアニドが発見されているなど、バニヤンの薬用としての可能性はまだまだ未知数なのです。

ワイキキの街にもよく似合う
ワイキキの街にもよく似合う

 バニヤンの木に寄生する害虫として知られるカイガラムシの一種からは、染料や、ワニスの主要な成分であるセラック(ニス)が採れます。セラックには様々な産業用途があり、なかでもヘアスプレーの成分として知られるほか、肌用の化粧品として、今日でも用いられます。

 学名:Ficus benghalensis クワ科イチジク属
 ハワイ名:なし
 英名:Banyan Tree, Indian Banyan Tree
 和名:ベンガルボダイジュ
 原産地:インド〜パキスタン / 外来種特徴

 トップページはハワイ島ヒロにあるバニヤン・ドライブのバニヤン。次回はカウアイ島のワイメアの町についてお話しします。



フラの花100「フラの花100─ハワイで出会う祈りの植物」(平凡社)
全192ページ 1,890円(税込)


フラにまつわる100のハワイやポリネシア由来の伝統植物・花々を厳選し、それぞれの植物や花々の文化的背景、歴史、伝承などをわかりやすく解説した楽園ハワイの植物ガイドです。

フラやキルト、レイなどはもちろん、ハワイの文化を知りたい人には是非ハワイにお持ちいただきたい一冊です。この本を片手に旅をすれば、きっとハワイがもっと好きになることでしょう。


アロハカワラ版「アロハブック・シェルフ」でも紹介しています
>>> フラの花100─ハワイで出会う祈りの植物

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