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カホオラヴェ島
近藤純夫
カホオラヴェ島の地形
島からマウイ島のハレアカラを望む

 ハワイ王国の旗には8つのストライプがあります。これらはハワイ諸島が8つの主要な島で成り立っていることを教えてくれます。島名すべてを答えられますか? 諸島でもっとも小さなカホオラヴェ島は、マウイ島の南にあります。

 カホオラヴェ島はマウイ島南岸のマケナ・ビーチから目と鼻の先にありますが、長く海軍演習地として占拠され、外部からは深く閉ざされていました。そのため、この島は「標的の島」とも呼ばれました。

 カホオラヴェ島はマウイ島の南西にあるため、北東からの貿易風は湿った風のほとんどをマウイ島のハレアカラ山で落としてしまいます。その結果、カホオラヴェ側にほとんど雨が降りません。この島は昔から農耕には適さず、一部牧畜が行われていたりした程度で、住む人はあまりいませんでした。しかし、広い太平洋を移動する優れた航海術を持っていた先住のハワイ人たちは、この地を聖なる島とみなしました。

 モア・ウラ・イキ山頂のコヘ・マーラマラマと呼ばれる巨石は古くから海路の目印として利用されました。この巨石は神の御神体でもあり、かたわらには素朴ながら、木組みの祭壇も作られています。遠い昔、ハワイ人たちは島に神が宿ると信じ、この岩に向かって海の安全を祈願したのです。しかし、これ以外にも数多く存在した祭壇やヘイアウは、ほとんどが軍の演習によって破壊されてしまいました。

掘り出された爆弾
軍の爆弾実験で出現した池

 この島に一般人は上陸できませんが、以前に植林ボランティアとしてしばらく滞在する機会を得ました。マウイ島のカフルイ空港からヘリで入るのですが、上空から見たカホオラヴェ島は想像していたとおり、赤土の吹きすさぶ荒涼とした土地でした。爆弾に粉砕され、どこまでも乾燥した赤土の大地が広がっていました。わずか10分ほどのフライト後に降り立った基地は、ハワイのイメージとはかけ離れた世界でした。無骨な建物と物資が積み上げられた広場があって、建物と建物の間にはすべて渡り廊下があります。これはまだ埋まっているかもしれない不発爆弾を踏まぬための用心です。

 第二次大戦後の1953年、合衆国海軍はこの島を爆撃演習場としました。カホオラヴェ島の自然にとっては受難のはじまりです。それから約40年後の1994年、島はハワイ州に返還されましたが、今なお、不発弾の回収や植林などの修復作業が続いています。

植林ボランティア活動はこのような状況の下で行われています。到着翌朝、午前4時半には起床し、軍の払い下げトラックの荷台に揺られながら作業現場へと移動します。島の最高所にあるルア・マキカという小火山クレーター内がぼくたちの現場です。そこは乾燥した大地に一日中強風が吹き荒れるところです。一同はバケツを持ってチップの山を掘り起こし、袋詰めにしていきます。自然の復元には、キアヴェという外来の樹木を伐採し、これをチップにしてから袋詰めにし、裸地の土砂止めにしていくのです。

爆弾を撤去した海岸
キアヴェの林

 作業自体は単純ですが、猛烈に吹きすさぶ風のなかで行うため、大地はつねに赤土が舞い飛んでいます。そのため、ゴーグルやマスクは必需品です。この島のスタッフたちは高品質のゴーグルを使用していますが、ボランティアに貸与されるゴーグルは簡素なものなので、すき間からどんどん赤土が入ってきます。どれだけ目の痛みに耐えられるか、というのが、最初の夜のみなの話題だったりします。

 作業はずっと中腰で行う力仕事ですから、腕も腰も次第に疲労してきて、何度も休憩をはさむようになります。大気は乾燥しきっていますから、水分補給も頻繁に行わなければなりません。土埃とチップまみれになって作業を終え、作業基地へ戻る頃には、着ている服はすべて赤茶色になり、区別など付かなくなります。

土壌の安定化や植林作業は決められた区画内でのみ行われ、勝手に歩き回ることはできません。一帯にははまだ多くの不発弾が埋まっているので立入禁止なのです。ときおりハワイモンクアザラシが現れる美しいビーチでさえ、海底にはまだ不発弾が残されているところもあります。

土壌が安定した箇所には新たに植物を植えます。島内に広く生育している帰化植物のキアヴェはすべて駆除される予定です。植林にリストアップされた樹木はオヒア、ククイなど全31種で、ハワイ固有種か、先住のハワイ人たちがハワイ諸島に持ちこんだ植物に限られています。これ以外に、ハイビスカスの原種であるコキオなどが27種類、カロ(タロイモ)やウアラ(サツマイモ)などの食用植物や蔓科の植物が計20種類、ウルヘなどのシダ類が7種類、アキアキなど草本類が10種類植えられる予定です。

モアウラ・イキのコヘ・マーラマラマ
モアウラ・イキの遠景

 この徹底した固有種移植計画が実現すると、200年以上前に消滅したハワイ諸島固有の植物相が再現されることになりますが、これは必ずしもかつてのカホオラヴェ島の生態を復元したものではありません。また、自然は植物相だけで成り立つわけでもありません。花をつける植物には鳥や虫など、花粉を媒体する動物が不可欠ですが、それらをどのように持ちこむのでしょうか。また、雨を確保するために、北京五輪で用いたような雨雲発生器を用いると言っていますが、そのようにしてまで島の自然を変更することに、ほんとうに意味があるのか、これからのプロジェクトの行方に興味があります。

かつて州政府は2003年には不発弾の処理を終わらせ、その2年後に一部地域を公開するとアナウンスしましたが、この計画は順延されています。40年ものあいだ破壊し尽くされた島を復元するには同じ時間がかかるという意見も関係者の間には根強いようです。

祭壇
ボランティア移動用トラック
土嚢作成をするボランティア





トップページの写真は島内にある作業基地です。次回はハワイ島ワイルク川の滝と自然についてお話しします。

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