ハワイの自然、文化、歴史がテーマのアロハWEBカワラ版
目次
【バックナンバー】
特集:知る・歩く・感じる
キルト・パラダイス
ハワイ日和
ミノリのカウアイ日記
アロハ・ブックシェルフ
ハワイ・ネットワーク
新定番!ハワイのおみやげ
スタッフルーム
アロハ・ピープル
フラ・ミュージアム通信
【ホクレア号】
ホクレア号横浜到着
ホクレア号での航海生活
ハワイの食卓
スタッフのいちおしハワイ
ハレピカケ倶楽部
アロハ・コラム
パワー・オブ・ハワイ
私のフラ体験
ハワイ日系移民の歴史
アストン・ストーリー
>アイランド・クローズアップ
ハワイ島編
マウイ島編
ホロホロ.ハワイ
カワラ版 トップページ
バックナンバー
クリック!
 
RSS1.0
有害動物
近藤純夫
低山からホテル、住宅街まであらゆるところに侵出しているマングース

  ハワイはどの大陸からも遠く離れた大洋のなかに孤立した島です。その結果、ハワイ諸島には独自の生物進化が起こり、動植物のほとんどがハワイ固有の種となりました。なかでも動物の固有種率は世界でも抜きんでて高く、鳥類は98%、淡水魚類は100%、昆虫類は99%、陸産貝類も99%が固有となっています。ちなみに、哺乳類はハワイ・モンク・アザラシとハワイオオコウモリの2種類しかいません。

  ハワイは6〜7世紀頃に最初の人間が訪れて以来、少しずつ独自の自然生態は破壊されていきました。とくに19世紀以降、各島で大規模なプランテーションが行われ、人口が増えて都市化が進んだ結果、多くのハワイ固有生物が絶滅しました。

 小さな土地であっても外敵の存在しなかったハワイの自然は動植物にとってパラダイスともいうべきところでしたが、人間たちによって持ちこまれたさまざまな動植物によって、生態系は大きく変貌してしまいました。たとえば99%が固有種の昆虫類は、今日、ハワイで全体の15%を占めるにすぎなくなっています。アリやコガネムシ、アゲハチョウ、セミ、ゴキブリ、マルハナバチ、カゲロウなどはすべて近世以降にハワイに侵入したものなのです。ハワイ州のペットのような存在になっているヤモリでさえ、有害な外来動物のひとつとして、本来は駆除されるべき対象です。

人の侵入と絶滅する動物

植物を根絶やしにする恐れのあるヤギ

 6世紀頃から13世紀頃にかけ、ポリネシア人が小さなカヌーに積んでハワイに持ちこんだものは、20数種の植物と、ブタ、イヌ、ニワトリでした。記録としては定かでありませんが、おそらくはネズミもカヌーに侵入してハワイにたどりついたことでしょう。これらが小さな島の集まりであるハワイでまたたく間に本来の自然環境を破壊しはじめました。

 たとえば1778年にジェームス・クックを初めとする外国人が到来するまでに、30数種の鳥類が絶滅していました。先住のハワイ人もまた、人間社会を構築し、日々の生活を営む過程で多くの動植物を絶滅に追いやったのです。唯一、その証拠として残されているのが、ハワイミツスイという小型の山鳥たちです。かつて島の権力者たちは自分たちの力を誇示するために鳥の羽根を編んでヘルメットやガウンを作りました。大型のガウンともなると、羽根の数は何万本にもなりますが、採取できる目当ての羽根は一匹あたり数本しかありません。そのため、大型のガウン制作は、何世代にもわたって続けられました。今日、このようにして作られたガウンやヘルメットは、ホノルルのビショップ博物館で観ることができます。

 先住のハワイ人が連れてきた野ブタは今日でも深刻な被害をハワイ固有の動植物に与えています。環境保護団体や研究機関は駆逐を望んでいますが、伝統生活を重んじるハワイ人はそれを拒んでいます。その一方で、主に西欧人たちが趣味としての狩猟目的で持ちこんだヤギやシカは野ブタ以上に深刻な被害をハワイの自然に与えており、ハワイの動植物にとってはこの先も深刻な状況が続きそうです。

 ハレアカラやマウナケアの斜面に生育する球状のギンケンソウがほぼ壊滅状態にまで追い詰められたのは、当初は人々がおもしろ半分に蹴り転がしたことや、後に白人が連れてきたヤギが野生化してこれを食べたことによります。同じように、船などに紛れ込んで侵入したアリもまた、甚大な被害を及ぼしました。なかでもアルゼンチンアリは、ギンケンソウの受粉を助けるハチの一種(チビムカシハナバチ)を捕食したので、自然保護にたずさわる人々は、ヤギだけでなく、地面の下に潜むアリの害にも注意を払わなければなりませんでした。

ブタは根を掘り起こし、その後に出現する泥土からは蚊が発生する

 19世紀以降、自然破壊は加速度的に進みました。サトウキビに被害をもたらすネズミを駆除するために導入されマングースは行動時間が異なるために役立たなかったばかりか、ネネなど、ハワイ固有の鳥の卵を食べてしまいました。そのせいでネネは一時絶滅の危機に陥ったのです。ネネは辛うじて助かり、今日、手厚い保護を受けていますが、ハワイマシコやハワイミツスイのうちの十数種、ハワイクイナ、コアハワイマシコ、オジロワシ属の一種、キカシラハワイマシコ、モアナロ(羽根の退化した大型の鳥)などはすべて絶滅してしまいました。

  今日ではトンボなどを補食するジャクソンカメレオンや、ハワイミツスイなどの生息域を脅かすメジロなど、籠から逃げたペットも深刻な被害を与えています。また、イヌやネコも野鳥を補食します。カウアイ島のアラカイ湿原に設置された木道を通って侵出する四つ足動物たちは、湿原だったおかげで護られていた脆弱な自然を徐々に破壊しはじめています。

  ハワイ州の鳥であるハワイガン(ネネ)はかつてマングースにより絶滅の危機に追いやられましたし、ハワイガラス(アララ)は生息域であるコアの森の消滅で、今日、絶滅の危機に追いやられました。コアの森は人間の都合によって牛や馬の放牧地として切り拓かれたほか、新芽や実生は動物たちの好む餌として食べ尽くされたからです。

カウアイ島アラカイ湿原の木道を伝って原生林を荒らす野犬

その他の有害動植物

 ドバト、カノコバト、チョウショウバト、カバイロハッカ、ゴキブリ、蚊、ノミ、シラミ、シロアリ、ヤモリ、トカゲ、アノールトカゲ、イグアナ、メクラヘビ、カエル数種、ブラックバスなどのバス類、ブルーギル、ニジマス、ナマズ類、オスカー、ツクナレなども自然界に大きな影響を与えています。ハワイ諸島はいまなお、環境保全対策に対峙するかのように、さまざまな負の問題を抱えています。

トップページは野ブタが掘り起こした地面の跡。次回はカウアイ島のリマフリ・ガーデンについてお話しする予定です。

モア(ニワトリ)
ゲッコ(ヤモリ)
ジャクソンカメレオン

 

 

 

【ハワイの自然】
 ダイヤモンドヘッドに登ろう (1) 2002年8月1日
 ダイヤモンドヘッドに登ろう (2) 2002年8月15日
 火山と溶岩 (1) 噴火に伴う溶岩 2002年11月7日
 火山と溶岩 (2) ハワイアンと溶岩 2002年11月21日
 火山と溶岩 (3) マグマとその動き 2003年11月20日
 火山と溶岩 (4) プレートの移動 2003年12月4日
 火山と溶岩 (5) 島の誕生と消滅 2003年12月18日
 マウナケアと天文台 (1) 2003年2月20日
 マウナケアと天文台 (2) 2003年3月6日
 渓谷の魅力 (1) ワイピオ渓谷 2003年10月2日
 渓谷の魅力 (2) ワイメア渓谷 2003年10月16日
 渓谷の魅力 (3) ワイポオ滝トレイル 2005年6月16日
 西マウイ・北海岸の自然 (1) 2003年7月3日
 西マウイ・北海岸の自然 (2) 2003年7月17日
 風と雨と虹の話 (1) 2002年9月5日
 風と雨と虹の話 (2) 2002年9月19日
 マカプ・ウ岬を登る 2004年4月15日
 トレイルを歩く(1) マノア滝トレイルを歩く 2004年5月6日
 地底の世界 (1) 2004年9月2日
 地底の世界 (2) 2004年9月16日
 観光洞窟 2004年10月7日
 トレイルを歩く(2) ペペオパエ・トレイル(モロカイ島) 2004年10月21日
 トレイルを歩く(3) ナーパウ・トレイル 2004年11月4日
 滝のある風景(1) レインボー・フォールズ 2005年2月3日
 滝のある風景(2) ワイルア・フォールズ 2005年2月17日
 滝のある風景(3) アカカ・フォールズ 2005年3月3日
 キラウエア (1) 2005年4月7日
 キラウエア (2) 2005年4月21日
 キラウエア (3) 2005年5月19日
 マウナ・ロア 2005年8月18日
 ハレアカラ 2005年9月1日
 トレイルを歩く(4) メネフネ神話発祥の山に登る
  (ノウノウ山イースト・トレイル)
2006年2月2日
 トレイルを歩く(5) ポロル渓谷 2006年5月18日
 キパフル・ウォーク 2006年6月1日
 温泉 2006年8月3日
 ピヘア展望台(カウアイ島) 2007年11月15日
 グリーンサンドビーチ散策 2007年12月20日
 トレイルを歩く(6) ワイアコア・ループ・トレイル 2008年6月19日
 ハレマウマウ 2008年9月18日
 マウイ島の山々 2008年10月16日
 モロカイ島の自然(1) 2008年11月20日
 モロカイ島の自然(2) 2008年12月18日
 ラナイ島 2009年1月15日
 カホオラヴェ島 2009年2月19日
 ワイルク川をさかのぼる 2009年3月19日
 > その他の特集は、こちらの「バックナンバー」からご覧いただけます。

個人情報保護の方針 クッキーの利用について
Copyright (C) 2002-2003 PACIFIC RESORTS.INC., All rights reserved.