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パワースポット(1)
近藤純夫

ワイキキ交番脇にあるカパエマフの石

アウマクアとマナ

 ハワイに限らず、世界にはパワースポットと呼ばれる場所があります。そこにいると心や体にエネルギーがみなぎると言われます。今回はハワイのパワースポットと、その背景にある文化をお伝えします。

 ハワイに移住した人々はマナと呼ばれる特別なエネルギーを大切にしてきました。彼らは見慣れぬ土地で暮らすにあたり、祖国のタヒチやマルケサスの信仰を持ちこみました。マナはそれらの島々から持ちこまれた文化でもあるのです。人は死ぬと、アウマクアと呼ばれる霊になります。アウマクアは木や魚や雲に身を変え、子孫を見護ると信じられました。ポリネシアで広く信仰される四大神の、カナロア、カーネ、クー、ロノもまた彼らの先祖です。つまり、自然界の森羅万象には先祖の霊が宿り、人々を見守るとされたのでした。ハワイ語ではそのような存在をマナ・キアイ(mana kia‘i)と呼びます。

 四大神は天地を創造したり、黄泉の国を司るなど、超人的な行ないもしますが、その本質は人々の死後霊です。彼らは神(GOD)と呼ぶより、霊(SPIRIT)と呼ぶのがふさわしいでしょう。アウマクアが宿るものには霊的なパワーがあると信じられ、彼らはそれをマナと呼びました。マナは神々だけが持つ能力ではありません。人間もまた自分の体に宿すことができるとされたのです。人々はマナを通じて先祖の神々とつながることができたのです。そのため、少しでも多くのマナを取りこもうと、力のある者どうしが夫婦となり、より強い子どもを授かることを望みました。その結果、土地の権力者である首長(アリイ)が別の権力者と結ばれるべきだという考えは、ハワイの伝統社会に深く浸透していきました。ときには親と子、兄弟姉妹が結ばれることさえありました。すべては霊的な力によってコントロールされているというポリネシア独自の文化が生み出したものとも言えるでしょう。ハワイ語ではこのような霊的な力の支配をカラクプア(kalakupua)と呼びます。

ハワイ島の噴火活動

 先住のハワイの人たちは戦いや収穫、火山活動など、すべての事柄に先祖の神々(アウマクア)が関わっていると信じました。大きなことを成し遂げる力は人間の知恵や体力では及ばないものです。マナはアウマクアと人間社会を結びつける重要な要素として重んじられたのです。

 強い者には強いマナが宿るという考えは人間に限りません。サメやクジラなど、人に脅威を与える生き物にまで及びました。人々は人間の力をはるかに凌駕するものを身につけることで自分のマナを高めるということも行いました。いまでは当たり前のように使われる花のレイは、かつては少なく、その代わりにクジラの骨やサメの歯、権力者の髪の毛などが重要な素材でした。

 同じような理由で巨石や高峰、大滝、辺境の地もパワーのあふれる場所として尊ばれました。人々は強い人、強いもの、強い場所を通じて、マナを取りこもうとしました。それらすべては先祖の霊(スピリット)ですから、天界と人間社会はシームレスにつながっています。人々は森羅万象を尊び、そこから強い信仰を導き出しました。このことからわかるように、パワースポットとは天と地を結ぶ特別の舞台ということができます。今回はそのような土地のなかから巨石に絞ってお話しします。

西マウイのベル・ストーン

巨石のパワーを信じる理由

 ハワイ諸島は火山の島です。人々がハワイ諸島を発見した1000年以上前にはハワイ島とマウイ島では活発な火山活動が続いていました。途方もないエネルギーを目の当たりにした彼らは、大地の奥底から出現した灼熱の溶岩には特別の力が働いていると信じるに至りました。タヒチ語で火山や溶岩を表すペレ(Pere)という言葉が火の女神ペレ(Pele)となった背景にはそのような背景があります。

 この結果、ハワイの人々は大きな石に特別の思いを注ぐようになりました。カウアイ島のポーハク・ピコやオアフ島のカパエマフ、あるいはクーカニロコ、ハワイ島のアカカ滝にあるカフナ・ストーン、マウイ島のハウオラ・ストーンなど、どの島にも巨石にまつわる多くのパワースポットがあり、いまも大切にされています。

 たとえばカウアイ島のホロホロ・クーにあるポーハク・ピコは出産の場として用いられました。巨石のそばで子を産めば、その子に大きなパワーが与えられると信じたのです。絶大なパワーを得られる母親は権力者の妻に限られました。ポーハク・ピコ敷地には他にもいくつか巨石があり、それらも特権階級の人々が使用しましたが、権力者よりも身分の低い母親は中規模の石しか使えませんでした。

カウアイ島のポーハク・ピコ

 人々は石のパワーを得るだけでなく、石のお告げも大切にしました。産まれた赤ん坊の臍の緒(ピコ)を石の上に残し、翌朝になってもまだそこにあれば子どもは大成し、王になるとされたのです。もしピコがネズミなどに持ち去られれば子どもの将来はありませんでした。そのような場合は口減らし(殺害)となることすらあったと言われます。

 表紙はカホオラヴェ島のモアウラ・イキにある聖地です。次回はパワースポット(2)と題し、高山や辺境の地、滝などにあるパワースポットと、そこに根づく思想についてお話しします。

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